組織づくり
Nov 20, 2023

売上成長に不可欠なレベニューオペレーション(RevOps):後編

前編に続いて、レベニューオペレーション(RevOps)について紹介します。後編では、RevOpsが見ていく指標、活用するシステム、組織の構築、適切な人材の素養、期待される効果について紹介していきます。

前編に続いてRevOpsについて紹介していきます。ここからは、指標、活用するシステム、組織の構築、適切な人材の素養、期待される効果について紹介していきます。

RevOpsの指標

RevOpsチームは、GTM戦略の効果を測定するために、さまざまな指標やKPIをトラッキングしています。これらの指標によって何がうまくいっていて、何がうまくいっておらず、どのプロセスを最適化できるかを特定します。ここでは、最も重要なRevOpsの指標について紹介します。

|リードジェネレーションに関する指標

  • リード獲得数 :一定期間に獲得した新規リードの数。デマンドジェネレーションの活動を測定するのに役立ちます。
  • リードの質 :リードのプロファイルや行動に基づきリードの有効性を測ります。リードの質が高いほどコンバージョン率も高くなり、インサイドセールスやセールスの活動効率にも影響します。
  • リードあたりのコスト:リードジェン活動の総コストを獲得リード数で割ったもの。

|セールスの生産性に関する指標  

  • 受注率:成約に至った商談機会の割合。セールスチームがどの程度効率的に商談受注を成立させているかを示します。受注率が高いということは、チームがリードを顧客に転換するための活動に優れていることを意味し、レベニューの増加につながります。
  • 平均セールスサイクル:受注までにかかる平均期間。
  • 平均単価:成約商談の平均受注金額。顧客属性やプロダクト、グローバル企業の場合にはエリアによってセグメント化して把握します。

|顧客に関する指標

  • 顧客獲得コスト:新規顧客を獲得するためのセールスとマーケティング活動のコストの合計を新規顧客の合計で割ったもの。マーケティングとセールスの取組みについて情報に基づいた意思決定を行い、リソースをより効果的に割り当てることができます。
  • 顧客生涯価値(LTV):顧客が生涯にわたって生み出すと期待される収益。獲得、リテンション、価格設定戦略を決定できるため重要です。また、将来のキャッシュフローとレベニューを予測するのにも役立ちます。
  • 継続率(リテンションレート):一定期間ごとに更新または維持された顧客の割合。
  • 解約率(チャーンレート) :上記の継続率の逆の指標。高い解約率は、サービスやプロダクトの質の悪さ、ニーズや要件の変化、または単に顧客がより良い代替手段を見つけたことが原因である可能性があります。理由が何であれ、傾向を特定し、それに対処するための措置を講じるために、解約率をトラッキングすることが重要です。

|財務に関する指標

  • MRR(Monthly Recurring Revenue):継続的なサブスクリプションやサービスからの収益。将来の収益の先行指標。
  • 年間経常収益(ARR):MRRに12ヶ月を乗じたもので、予測される年間経常収益を表す。
  • 収益成長率:前年度比での収益全体の増加率。 

このように、RevOpsでは先行指標と遅行指標の両方を分析します。リードやパイプラインのような先行指標は、将来のレベニューパフォーマンスに関するインサイトを把握します。成約や解約のような遅行指標は、過去のパフォーマンスの結果を示します。両方の指標をトラッキングすることで、レベニューエンジンの全体的な健全性と改善のためのロードマップを描いていくことが可能になります。

RevOpsのツール

データを分析しプロセスを最適化し業績を改善点を提示するためには、さまざまなソフトウェアやシステムを利用しています。ここからは関連する主なツールについて紹介します。すべてを紹介しきることは難しいため、主要なものについての紹介に留めます。

|顧客管理システム

Salesforce、HubSpotなどのCRMは、セールスと顧客とのやり取りや商談を管理するための記録システムとして機能します。CRMを使用してセールス活動を可視化し、トレンドを把握し、セールスとマーケティングの取組みにおける傾向を把握し調整します。

|アトリビューション

Google Analytics、Bizible(Adobe Marketo Engage)、Neustarのようなアトリビューションツールは、キャンペーンや商談に影響を与えるタッチポイントをトラッキングすることで、マーケティングパフォーマンスを分析することを可能になります。これにより、マーケティング費用と戦略に関するデータドリブンな意思決定を実現します。

|DWHやアナリティクス

Snowflake、BigQueryなどのプラットフォームは、大規模なデータセットを分析するためのストレージ、処理、可視化機能を提供します。これらのツールを活用し、戦略に役立つインサイトを見つけていきます。

|レベニューインテリジェンスプラットフォーム

GongやMiiTelのような目的に特化したAIを駆使したプラットフォームは、顧客とのやり取りやセールスプロセスに関するデータを収集し、分析して、セールス活動の改善や意思決定をサポートします。

|BIツール

Tableau、Power BI、QlikのようなBIツールにより、主要なレベニュー指標、トレンド、インサイトを表示するカスタムダッシュボードを作成することができます。これらのツールは、組織全体にインサイトを共有するのに役立ちます。

|プランニングツール

AnaplanやAdaptive InsightsのようなFP&Aプラットフォームは、財務シナリオをモデル化し、レベニューベースの計画とフォーキャストを調整するために、RevOpsによって活用されています。これは予算編成とオペレーションを強化するのに有効です。

 テクノロジーの適切な組み合わせは、プロセスを最適化し、レベニュー成長を促進するために必要なデータ、分析、インサイトを提供します。RevOpsチームは、可視化、計画、実行のためにこれらのテクノロジー活用をする他、戦略を実現するための適切なテックスタックデザインも不可欠です。

 レベニューオペレーションの組織構築

RevOpsの取組みを成功させるには、入念な計画と実行が必要です。ここでは、効果的なRevOpsチームを構築するための重要なステップを紹介します。 

|役割の定義

まずなぜ必要なのか、そしてそれによって何を達成したいのかを明確に理解する必要があります。この役割の責任と目標を明確にします。そしてまだ比較的新しい考え方や概念であるため、時間をかけて、RevOpsが担うすべきもの、そうでないものについてステークホルダーと一致させる。フォーキャスト、分析、アトリビューション、セールスオペレーションなど、レベニューに影響を与えるデータドリブンなプロセスに焦点を当てて考えていきます。既存のセールス、マーケティング、ファイナンスなどとの重複を避けて役割分担を明確にすることも重要です。そして明確かつシンプルなミッションステートメントを作成します。これは、チームの目標と目的を特定し、それらをどのように達成すべきかについての指針となります。

|チームの構成

適切な体制と人員を決定します。多くの場合、戦略を定義するために、集中的なレベニューオペレーションのリーダーまたはVPから組織化していきます。チームの成長に合わせて、フォーキャスト、分析、セールスオペレーション、その他レベニューにフォーカスした機能のスペシャリストをニーズに応じて採用していきます。RevOpsは独立した部門である場合もあれば、GTMチームにまたがる横串の部門である場合もあります。これが正解であるという万能な配置はなく、自社にどうフィットするかという観点で考える必要があります。

|プロセスとシステムの導入

データ統合、アナリティクスやレポーティング、フォーキャスティング、スケジュールなど、標準化すべきコアなレベニュープロセスを特定していきます。その際には、部門を超えてデータを一元的に保存できるプラットフォームを選択することが重要です。また、チャネル間でデータをリアルタイムで自動的に同期し、チームがいつでも簡単に更新できるようにする必要があります。そして、新しいプロセスについて、レベニュー組織をトレーニングするためのガイドとプレイブックを作成します。 

|測定

フォーキャスト精度、パイプラインカバレッジ、受注率、生産性などのKPIを通じてレベニュープロセスのパフォーマンスをトラッキングします。RevOpsが持つ目標は成長と営業効率へのインパクトを実証できるもととし、会社のレベニュー目標に直結するものにします。プロセス、レポーティング、イネーブルメントを改善するために、ステークホルダーから継続的にフィードバックを得ことも必要であり、組織化すればよいわけではなく反復的な機能です。

|チャレンジやベストプラクティス

経営陣の賛同が得られず、KPIが不明確であることは、よくある苦戦してしまうケースです。RevOpsが会社の経営陣・リーダーシップから明確な信頼や権限を与えられていることが成功のために必要です。最初から大海原を沸騰させようとする大規模な取組みではなく、小さく始めて、実証された効果に基づいて拡大していきます。クイックウィンで関連する組織において信頼を築いていきます。立ち上げにおいては、部門横断的な経験を持つRevOpsのリーダーを採用することができれ最適です。RevOps経験があるからといって、アナリティクスのスキルだけでは不十分で、強力なリレーションシップ構築力と組織影響力が特に必要です。しかし、日本においては経験者を採用するのはほぼ不可能ですので、組織内で部門横断での取組みに適した人材を配置することが有効です。

高い業績を実現するRevOpsの構築には時間がかかるものです。目標の調整、価値の実証、チームとプロセスを洗練し、柔軟性をもって運用していきましょう。適切な基盤があれば、企業が予測可能で再現性のある収益成長を推進するための変革に貢献していくことができます。

組織の配置

RevOpsに取組む企業は日本でも増えてきています。しかし、組織構造のどこに位置づけられるべきか、誰にレポートすべきかについては、様々な議論がある部門です。ここでは、RevOpsに関する一般的な組織構造をいくつか紹介します。

|CRO

RevOpsの責任者がチーフレベニューオフィサー(CRO)にレポートするのは、非常に一般的な構造です。これにより、GTM戦略とレベニューオペレーションが緊密に連携することができます。CROはRevOpsチームを活用することで、GTM戦略推進に必要な情報を取得し、プロセスを最適化し、データドリブンな意思決定を行うことができるようになります。このモデルでは、RevOpsのリーダーはセールス、マーケティング、カスタマーサクセスといったCRO配下のレベニュー組織と密な連携が可能です。

|CFO

CFOの下にRevOpsを置く組織も存在します。これにより、RevOpsとファイナンスの計画、モデリング、パフォーマンス分析がより密接に結びつきます。また、経営陣の意思決定に情報を提供するためのフォーキャスト、分析、インサイトに重点を置くようになる。このモデルでは、RevOpsがセールスやマーケティングなどのレベニュー組織から孤立してしまうリスクがある。

|セールスオペレーション

専門のRevOpsがない組織では、この役割はセールスオペレーションを担う部門にあることが多いです。セールスの生産性、コンペンセーション、業績管理に関する調整が可能になります。難点は、RevOpsがセールス部門内に閉じこもりすぎて、カスタマージャーニーに対する広い視野が欠けてしまう可能性が出てくることです。

|CEO室など

RevOpsをCEO室やCOO室にロールアップすることで、幹部クラス配下の全体の戦略的イネーブラーとして位置づけることができます。ここに配置されることで、より広範なビジネス戦略とオペレーションと密に連携を図ることが可能になります。しかし、このような構造は、セールス、マーケティング、カスタマーサクセスなどのレベニュー組織と孤立させる可能性もあることを念頭に置きコミュニケーションプランを設計する必要があります。

理想的な構造は、組織の規模、業界、目的によっても異なります。しかし、主要なRevOps機能を一元化することで、レベニューエンジン全体でデータドリブンな意思決定が可能になります。

レベニューオペレーションの人材採用

チームを成功させるには、適切なスキルを兼ね備えた人材を採用する必要があります。ここでは、人材配置する際に考慮すべきポイントをいくつか紹介していきます。日本においては外部から経験者を採用することは困難ですので、自社内で組織化する際にどういった人材を抜擢すべきかにおいて意識してみていくべきポイントとして理解してください。

■ 必要なスキル

|強力な分析能力と問題解決能力

様々なシステムからデータを統合し、改善点を特定する必要があります。

|プロセスオペレーション

プロセスの最適化はこの役割の中でのコア機能であるため、構造的に物事を考え組み立てる力は極めて重要です。

|技術的な適性

すべてのシステムの専門家である必要はないですが、テクノロジースタックがどのように連携しているかを理解するためには、ある程度の技術的な能力は重要です。

|コミュニケーションとコラボレーション

セールス、マーケティング、カスタマーサクセス、ファイナンスなど他の組織と連携なくして成り立たない役割ですので、コミュニケーションスキルは不可欠です。

|戦略的思考

戦略的アプローチをとり、自分たちの仕事がより広範なビジネス目標にどのような影響を与えるかを理解して価値発揮する必要があります。

■ 理想的な経験

なんらかMOpsやSopsなどのオペレーション組織での経験値があるとベストですが、まだ経験者が少ないこの領域でRevOpsにキャリアチェンジして頂くことで活躍可能性がある経験を紹介します。

|テクニカルなバックグラウンド

個人的には、ビジネス戦略やレベニュー成長への貢献に関心があるエンジニアがRevOpsを中心とするオペレーション組織にキャリアチェンジしていくことを期待しています。エンジニアリングまたは製品担当の職務経験は、テクノロジースタックのデザインなどにおいて、ビジネス戦略を補完する強力なナレッジとなりえます。

|コンサルティング

コンサルティングの経験は、クリティカルシンキングと問題解決能力という点で活躍可能です。また、ITコンサルタントはビジネスとテクノロジー領域の橋渡しをすることに慣れおり、早期に立ち上がることができる可能性があります。しかし、外部からのコンサルティングと違い組織の当事者となるため、生のデータやヒト・組織との関わりの中で組織貢献していく必要があることを念頭においていただく必要はあります。

レベニューオペレーションの影響

最後に、RevOpsを組織化することによって得られるビジネス成長に与える影響についていくつかのポイントで紹介します。

|レベニュー成長

効果的なRevOpsは、セールス、マーケティング、カスタマーサクセスのプロセスをエンドツーエンドで連携させることで、レベニュー成長の加速を実現します。RevOpsは、セールスプロセスを遅らせるボトルネックを特定し、改善するための働きかけを実施します。各プロセスにおいて自動化を導入するなどレベニュープロセスをスピードアップを図ります。また、RevOpsは、より優れたセールス、マーケティング戦略に役立つデータに基づくインサイトも提供します。これらにより、最終的にセールスチームはより多くの商談を成約し、より高いレベニューを上げることができます。

|生産性の改善

強力なRevOps機能は、ビジネス効率の向上を実現します。RevOps部門は、冗長な手作業を排除するためのプロセス改善とテクノロジーを導入します。チームとシステムを連携させることで、業務を合理化します。また、RevOpsは、チームがよりスマートに業務を遂行できるよう、レポーティングとアナリティクスを提供します。これにより、レベニュー組織の時間とリソースを解放し、成長を直接促進するインパクトの大きい活動に集中することができます。

|データドリブンな意思決定

アナリティクスに重点を置くRevOpsは、組織全体でデータドリブンな意思決定を可能にします。RevOpsは、売上のフォーキャスト、顧客メトリクス、製品パフォーマンスなどに関するインサイトを提供します。経営陣・リーダーシップはこのデータを活用して、採用、マーケティング予算、製品のロードマップ、その他の成長要因について、情報に基づいた戦略的意思決定を行うことができます。直感ではなくデータに頼ることで、より良いビジネス成果につながります。

|部門をまたいだ連携

RevOpsは、セールス、マーケティング、プロダクト、カスタマーサクセスの間のサイロ化を解消します。これによりコラボレーションが促進され、すべてのチームが統一された成長戦略に向かって取り組んでいることが明確化されます。この連携により、組織は共通の目標に向かってより効率的に実行することができるようになります。また、チーム間のコミュニケーションと関係も改善されます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。前編・後編と2回に渡って、レベニューオペレーション(RevOps)の役割や重要性、活動内容、指標やシステム、組織の構築、適切な人材の素養や期待される効果について紹介してきました。RevOpsは戦略立案や目標達成に向けた進捗確認と軌道修正、そして業務効率化、イネーブルメントに至るまで、組織全体のパフォーマンス向上を幅広く担う存在であり、ビジネス成長に大きなプラス効果をもたらします。レベニュー拡大の原動力となり、効率を改善し、データドリブンな意思決定を可能にし、部門間の連携を強化します。どのような高成長企業にとっても、RevOpsは持続的な成長に不可欠であるといえるのではないでしょうか。

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